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剪定に入りました! [ブドウ栽培とワイン醸造について]

84歳になった私の祖母は、食用葡萄の栽培家です。小さい頃、よく祖母にくっついて、畑で遊んでいました。

あるとき、父に、「剪定のやり方を覚える前に、どうして剪定をするのか考えなさい」と言われたことがあります。
父は、今も昔もいつも簡単には答えを教えてくれません。
テイスティングも「自分で気付かなければだめだ」と、ブショネ一つ教えてはもらえませんでした。

そんなある日、勝沼のワイナリーの醸造責任者の土橋さんが、ワイナリーの前の薔薇を切っていました。
「樹が暴れるから」
それを聞いて、剪定は、植物の野生化を防ぐために行うということに気付きました。
(余談ですが、土橋さんは、私がまだランドセルを背負っている頃から、中央葡萄酒で働いています!)

それからずっと大きくなって、剪定は、樹のバランスを取ったり、収量を調節する意味があるという栽培学を学びました。


世界には色々な剪定方法があります。
中には、「ゼロ剪定」という方法もあり、オーストラリアなどで行われています。
これは、"剪定しない"という考え方ですが、一年目の枝が適当な長さに切られるという、ちょっと変わった短梢剪定のようです。

フランスでは、法律によって、その土地その土地の選定方法が決まっています。
私は、ブルゴーニュのマコンで研修を積みました。

この地区のシャルドネは、「アーキュー」という方法で剪定されます。
アーキュー.jpg

フランス語で「ギュイオ」、日本語で「長梢剪定」と言われるこの切り方ですが、コートドールのギュイオとは、少し異なります。
マコンでは、一年目の枝に残す芽数が、12までと決まっています。

この枝ですが、葡萄の樹は、端になればなるほど、樹勢が強くなります。
最大12芽まで残した場合は特に、枝の樹勢がばらばらになりやすいので、弓のように枝を曲げて、均一化をはかります。

剪定は、こう見えても力のいる作業なので、マコンで働いていた時は、栽培家の男のひとたちが枝を切り、奥さんたち女性が、アーチ型に枝をワイヤーに結び付けているのが印象的でした。


日本にも、日本ならではの樹勢の強さをコントロールするために、様々な知恵のもと、選定方法が取られています。
私たちのワイナリーでは、時には、長梢剪定、時には、2芽のみ残して切る短梢剪定を行います。


1 まず、樹の樹勢を見て、どのように切るのか、残す芽数を考えます。例えば、細すぎる枝に対して、芽数を多 く取るようなことはしません。ひとつひとつの樹に合わせた選択が必要になります。
 赤松さん。真剣に考えています!
剪定 赤松さん.JPG

2 切ります。器用な仲野農場長です。
 剪定 仲野さん.JPG

潮上さんも切っています。12月ですが、明野の風は冷たく、氷点下になることも。みんな完全防備です。今年は、少し早めの剪定ですね!
剪定 潮上さん.JPG

3 切った枝を抜きます。巻きヅルがからまるので、結構力いるよね、水野くん。
剪定 水野くん.JPG


ちなみに、これは日本以外で見た事がないのですが、私たちのワイナリーでは、ワイヤーに残った巻きヅルを取り去ります。
湿気が多い日本では、病気の繁殖を助けるものを、できるだけワイヤーに残さないようにします。
ワイヤーの巻きヅル、見えますか・・・?
剪定アルフィー.JPG


畑を囲む山々のてっぺんも、だいぶ白くなり、空気が清々しく感じられます。
私は、超が付くほど低血圧なので寒さが応えるのですが(ごめんなさい、どっちでもいいですね[たらーっ(汗)])、冬は明野の空気が澄んでいることを感じられる美しい季節だと思います。

そして、栽培のみんなの慎ましさのようなものが響いてくる季節。
グレイスワインは、よく「キレイなワイン」と評価していただきますが、冬も朝7時半から畑で働くみんなの厳しさや、慎ましさがワインに醸されているからなのかもしれません。

そう言えば、剪定を学んだ幼少の頃、もののけ姫ではありませんが、「ヒトは自然とは共存できない」という厳しさも教えられたように思います。
ワインは、自然の産物である一方、植物をコントロールしてヒトが造るもの。
野生化された樹からではなく、ヒトの最大限の努力と知恵からいいワインができる。今もそう割り切っています。



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